固定電話・携帯電話やインターネット、ITサービスやシステム開発などを幅広く手掛け、日本のみならず世界になくてはならない会社。
それが、日本政府の出資する特殊会社・NTT(日本電信電話株式会社)グループです。

かつては国営の電電公社(日本電信電話公社)として、日本の通信事業を一手に担い、株式会社化したいまでも国内最大の通信事業者として強い影響力をもつNTT。

そんなNTTが、いま政府が進める「大軍拡」の影響を受けようとしていることをご存知でしたか?

NTTの株式が「大軍拡」の財源に!?

自民党の作業チームは、軍事費(防衛費)を増額するための財源をできるだけ増税以外で賄おうと、2023年6月に突如「日本電信電話株式会社等に関する法律(NTT法)」の見直し議論を開始しました。
すなわち、政府の保有するNTT株式を市場に売却して、その利益を軍事費にあてようというたくらみが始まったのです。

そしてこのほど、自民党の作業チームは、2025年までに「NTT法の廃止を求める」などとする提言の原案をまとめました。

NTT法では、政府に対しNTTの株式の3分の1以上を保有するよう義務付けていますが、作業チームがまとめた提言の原案によると、株式の保有義務については「撤廃すべき」としたうえで、実際に売却するかどうかは「政策的な判断に委ねるのが妥当」としています。
大軍拡・敵基地攻撃能力保有という「政策的」目的のために、日本の重要な通信インフラが危機にさらされます。

政府は、23〜27年度の5年間の防衛費総額を43兆円ほどと定めています。
この費用を賄うため、政府・自民党は、なりふり構わぬ手段で財源を確保しようとしています。

自民党は、国民の厳しい生活に背を向けて、軍事費を国内総生産(GDP)比2%以上にまで倍増しようとしています。この目標を達成するには、年間5兆円規模の予算が必要です。

NTTの政府保有株の価値は、11月18日時点の株価で、ちょうど約5兆円分に相当します。

NTTの通信設備には、かつての国営企業・旧電電公社から引き継がれた設備もあり、公共性・公益性の極めて高い重要なインフラです。大軍拡のために通信インフラを切り捨てることは許されません。

仮にもし、同社に対する政府の関与を義務付けたNTT法が廃止されれば、どうなるでしょうか。

ユニバーサルサービスとは

国民生活に不可欠な通信サービスである、電話回線や公衆電話、110番のような緊急通報、および災害時用公衆電話は、日本全国で提供されるべきサービスとして、基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)に位置づけられています。

これらの電話のユニバーサルサービスは、NTT東日本とNTT西日本(NTT東西)が、法令に基づき、日本全国であまねく提供する義務を負っており、高コスト地域を含む日本全国で提供されています。

NTT法廃止でこの義務が廃止され、NTT各社が純粋な民間企業として利益最優先の経営に転換するならば、山間部・島嶼部などの不採算エリアは切り捨てられるかもしれません。

自治体もNTT法廃止に懸念

これに懸念をもった携帯大手3社は、180の企業・地方自治体などとともに、NTT法廃止に反対する要望書を政府に提出しました。

要望書は、NTT法が完全廃止されれば、以下のような懸念点があると指摘しています。


(1)NTTおよびNTT東西の責務や事業上の制約などが撤廃されることで、NTT東西自体による事業拡大や、NTTグループの一体化がさらに進み、日本の健全かつ公正な競争環境が阻害され、利用者料金の高止まりやイノベーションの停滞など、国民の利益が損なわれるおそれがあること。

(2)災害時のライフライン確保、DX推進、地方・都市の持続的発展など、さまざまな社会課題解決に向けては、安心安全・強靭かつ高速・大容量の通信環境を、地域を問わず実現することが必要であり、民間事業者の競争によって進展してきた。他方、競争でカバーできないエリアについては引き続きNTTがラストリゾートの役割を担うことが適当。NTT法の廃止により電電公社由来の資産・重要な設備を継承するNTTが当該公益的な責務を負わなくなるおそれがあること。

(3)CATVなど地域に根差した事業者がこれまで提供してきた地域に応じた情報化、防災、生活情報などの地域情報の発信機能についてNTTグループは有しておらず、地域事業者が排除された場合に地域サービスの衰退の懸念が生じること。

NTT法の見直しに関する要望書を提出(株式会社ソフトバンク)

財源確保の努力を教育・育児にまわせ

大軍拡の目標達成に必要な、年間「5兆円」という大金。

もし、年間5兆円の予算を教育や年金、医療など暮らしのために振り向ければ、どのようなことができるでしょうか。

たとえば教育に使えば、大学授業料の無償化が年1兆8,000億円で実現できます。

これでもまだ5兆円には届きません。児童手当の対象を大きく広げることも可能です。支給対象を現在の中学3年までから高校3年までに延長し、さらに家庭の所得制限を撤廃しても、約1兆円の予算で実現可能です。

それだけでなく、小中学校の給食費無料化(年4,386億円)だって実現できます。

これらをセットで実現しても約3兆円にとどまります。
それほどまでに、5兆円という予算は非常に大きいのです。

5兆円あれば、消費税を8%まで下げても財政はまかなえます。

国の重要インフラを売り払ってまで軍事費を調達するのであれば、まずは生活に回すべきではないでしょうか。

「改革」の裏に潜む「軍拡」に警戒を

旧電電公社の民営化からまもなく40年を迎えようとしています。

インターネットの普及により、かつてなく通信の重要性が高まっているいま、適切な形でNTTグループを改革していくことは、政界・財界でも大いに議論されるべきことです。

しかし、政府・自民党のなりふり構わぬ「大軍拡」に向けた姿勢が、いまのNTT法改正・廃止論には潜んでいることには警戒が必要です。

青年・国民の「増税反対」の強い声に押されて、政府・自民党は「防衛費増税」のたくらみを延期せざるを得なくなっています。ですが、「大軍拡」という政策実現のためには、莫大な財源が必要なことは変わりません。

(関連記事:岸田首相「防衛増税」1年先送り表明——「大増税・大軍拡」をセットで阻止しよう!

国民生活のあらゆる分野から、軍拡のための財源を探し出そうと、いま岸田政権は必死になっています。
こうした政権のおぞましい姿を、一人でも多くの友達・周囲の青年に伝えていきましょう!

投稿者 タカナシ

WAKEながの(敵基地攻撃能力・大軍拡に反対する長野市第四地区ネットワーク)の社会人メンバー。 学生時代には超党派の立場から、のべ6政党への政策提言・意見交換を実施。 2023年から全国青年憲法運動に参加。 好きな権利は平和的生存権(憲法前文・9条・13条)。