イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への侵攻が長期化しています。
この紛争では、イスラエル軍は「病院がハマスによるテロ行為の隠れ場所となっている」などと主張してガザ地区の病院に大規模な攻撃を加えており、医療情勢が危機的な状況にさらされています。

こうしたガザ地区の現状と日本のできることを学ぼうと、「イスラエル・ガザ紛争×医療 若者学習会」が11月23日、長野市で開かれました(主催:民青同盟長野県委員会)。講師に日本共産党の武田良介前参議院議員を招き、計5人が対面参加しました。
「天井のない監獄」ガザの実態
学習会では、長年ガザ地区での医療支援に取り組んできた、医師の猫塚義夫氏らによるトークセッション映像が上映されました。
「天井のない監獄」ガザの実態
ガザ地区は、「天井のない監獄」と形容されるほど厳しい状況にあります。
紛争前、長野県でいえば安曇野市より少し大きいくらいの面積しかない細長い地域に、200万人以上が暮らしていました。国境には、イスラエルによって高い壁が築かれ、住民が自由に出入りできないよう厳しく封鎖されています。
いまは、およそ150万人以上が避難所に身を寄せ、犠牲となった方は1万1,200人に達しています。
猫塚氏は、ガザの人々が封鎖と爆撃の脅威の中で生活していることを目撃し、特に若者たちの絶望的な状況を指摘しました。
ガザでは18歳から28歳の若者の中で70%近くが失業しており、自殺する若者も増えています。また、イスラエルへの抵抗運動に参加して殺される若者もいます。イスラム教の教えでは自殺は認められていないにもかかわらず、このような行動が取られていることは、「(生きるより)瓦礫の下で死んだ方がマシだ」との叫びが上がる現地の絶望的な状況を物語っています。
また、猫塚氏はガザの男子中高生が「荒れている」実態も語っています。喧嘩っ早く、猫塚氏も眼鏡を盗まれるなどした経験をあげ、ガザの子どもたちが絶えず封鎖と爆撃の脅威の中で育っているという厳しい現実の反映だと話します。
「ケータイ画面の光で手術」医療現場の現実
医療状況は極めて困難で、病院の電力不足により、手術中に停電してしまい、スマートフォンの光で照らして手術を続行することさえあります。医療設備や薬の不足が深刻で、猫塚氏はこれらの現実を詳細に報告しています。
ガザには大学の医学部もあり、年間40人が卒業しますが、医師になっても、働く場所も研修する場所もありません。
「未来がない」「先がない」そういったガザの若者の声に耳を傾け、ともに涙した経験を猫塚さんは語りました。
2023年以降のガザ侵攻とその影響
2023年以降のイスラエルによるガザ侵攻では、特にガザ北部の病院が壊滅的な被害を受けています。猫塚氏は、これらの侵攻がもたらす医療現場の壊滅的な状況について報告しています。
ガザのジャーナリストが伝えた赤ちゃんの死
猫塚氏は、ガザのジャーナリストの家族がイスラエルの空爆によって家を破壊され、赤ちゃんが亡くなった悲劇を紹介します。
ガザに暮らす独立系ジャーナリストのサメ・アフメッド・エンさんは、自宅マンションに爆弾を落とされ、1歳の子どもと義妹を亡くしました。動画では、彼が亡くなった子どもを抱き抱えて立っている様子も紹介されています。
病院破壊、戦死、怪我、飢餓——イスラエルの「ハマス壊滅」目的
ガザでは病院の破壊、多数の戦死者、怪我人、そして飢餓が広がっています。イスラエルは「ハマスの壊滅」を目指しており、これが多くの民間人の犠牲を伴っていることが強調されています。
「病院への攻撃予告」患者に逃げ場なし
イスラエルは10月、ガザ市内のアル・クッズ病院に対し、当該地域が戦闘エリアになるとして、退避するよう通告しました。しかし猫塚さんによれば、この病院は市内でも大きく、重篤な患者や新生児もいると指摘されています。避難のしようがない状況での「退避通告」は、「のたれ死ね」ということと同じだと猫塚氏は批判します。
そしてこの「爆弾や銃で撃って殺すんじゃなく、死ぬ状態に持っていっちゃう」ことこそが、パレスチナ情勢が「最悪の人道危機」といわれることの本質だと指摘します。
日本政府の役割と中東の信頼
猫塚氏は、日本政府に対し、イスラエル・パレスチナ両国に対し直接交渉してほしいと求めます。そして、いまの日本政府が急速に「イスラエル寄り」になってしまったことに懸念を示しました。
もともと、日本は2006年に、パレスチナ周辺の平和の枠組みとなる「平和と繁栄の回廊」構想を提唱するなど、パレスチナ支援も行っていました。しかし、2015年に当時の安倍晋三首相がイスラエルのネタニヤフ首相と会談して以降、日本はイスラエルと「準同盟国」になり、軍事・技術支援を強めている猫塚さんは指摘します。
猫塚氏は、日本がイスラエルとの軍事的関係を断ち切り、イスラエル・パレスチナの双方に停戦を呼びかけるような存在感を示すべきだと語ります。
日本は、これまで中東諸国を侵略したことがなく、またイスラム教(パレスチナの国教)を弾圧したことのない先進国です。このことが、住民にとっては「中立的な国」というイメージを持たせ、安心感になっているといいます。このような状況だからこそ、日本はこの問題解決に関わるべきはずです。
しかし、岸田政権は、国連総会で採択された、双方の「人道的休戦」を求める決議に棄権してしまいました。猫塚さんは、このことは「アメリカの顔を伺って、そっちに軸足を置いているとしか考えられない。危ないです」と指摘し、日本がこの決議に賛成できなかったことを「本当に情けない」と語ります。
パレスチナの「民族自決権」守るべき
猫塚氏は、パレスチナ人の「民族自決権」を守ることの重要性を強調しています。彼は、イスラエルによるパレスチナ人への非人道的な扱いを非難し、国際社会がこれに反対するべきだと述べています。

日本の軍拡姿勢は「腹立たしい」
悲惨な道への歩みを止めよう
この学習会では、参加者たちがガザ地区の深刻な状況を理解し、日本の政治的立場と行動について活発に議論を行いました。
以前、猫塚氏の講演を聴いたことがあるという医療従事者は、当時の講演でもパレスチナ情勢のことを語っていたことに触れ、自分が知らないだけで水面下では戦争の火種があったことを再認識したと語りました。そのうえで、いまのイスラエル・パレスチナ情勢について、「日本のどっちつかず状態は許されない」と強調します。
そして、日本のもつ中立的立場の貴重さに触れ、「その気になればできることはたくさんある」一方で、「逆に日本が兵器をたくさん持つことは、他国とは異なる意味を持つことになる」と、いま自民党政権が進めている大軍拡に警鐘を鳴らしました。
医療職としての勤務経験のある青年は、日本がいまイスラエルの行っている戦争犯罪を「国際法違反」だと明言できていないことについて、「黙秘の状況」だと指摘。「戦争か平和か」が強く問われる時代に、日本が大軍拡を進めていることに「腹立たしさを感じる」として、日本も危険な道を進んでいると危惧しました。
日本国民はイスラエルを変えることはできないが、日本政府を変えることはできる
学習会では、ガザでいま起きていることについて「知らなかった」「若者にもっと実際に起きていることを知ってほしい」といった声が多く上がりました。
講師を務めた武田前参議院議員は、こうしたガザでの出来事について、「どこで、どういう人道状況で、何が起きているか、それを知らなければ人道支援のしようがない」として、「知ること自体が大事」だと話します。
そして、猫塚氏の発言を踏まえ、いま起きていることは宗教問題ではなく、国際法違反・占領・監視・空爆といった、現実に起きている平和と民主主義の問題であることを強調しました。
国際法を無視した、国際機関や病院施設へのイスラエル軍の攻撃に対して、岸田政権も、アメリカ政府も「国際法違反」だと言うことができていません。武田氏は、こうした攻撃は「国際的に許されない行為だということをはっきり言わなければ」と語っています。
武田氏は、長野県内で平和を求める人たちの声を紹介しながら、日本の政治を変えてこそ、ガザの人たちの平和を守ることにもつながると強調し、「日本国民はイスラエル政府を変えることはできないけれど、日本政府を変えることはできる。平和国家に変えられる」と訴えました。
この学習会を通じ、平和の守護者としての日本の役割を再考し、積極的な政治参加を通じて平和を推進することの重要性が共有されました。
